古典アルメニア語(こてんあるめにあご)は、5世紀から18世紀まで用いられたアルメニアの文語である。古代ギリシア語、ペルシャ語、ヘブライ語、シリア語、ラテン語などの手稿で失われたものも、古典アルメニア語で残っているものからは推察できるなどでも重要である。

現在(21世紀初頭)でも、アルメニア人にとって主要なアルメニア使徒正教会やアルメニア・カトリック教会 (Armenian Catholic Church)の典礼では、古典アルメニア語が使われている。

ラテン文字転写

転写法は数種類あるがアントワーヌ・メイエの提案した転写法が主流である。

  • ēは二重母音のeyがeよりも狭く発音されるようになったものでeの長音ではない。
  • uはギリシア文字にならいՈՒと書かれる。
  • ōは二重母音のawが[o]になったものでoの長音ではない。
  • fとōは後代になって追加されたものである。

母音

  • 単母音:a,e,i,o,u,ə(曖昧母音),ē
  • 二重母音:ay[ai],oy[oi],aw[au](またはō),ew[eu],iw[iu],ea[ia]
  • アルメニア語では母音の長短の区別がない。
  • 現代音では語頭のe,oに半母音を伴い[je],[vo]と発音する。
  • ay,oyは語末で[i]を落とし[a],[o]と発音する。

子音

  • p,b,p'('がつくものは有気音を表す。通常は「‘」が用いられるがここでは'を用いる。以下略),k,g,k',t,d,t',c[ts],j[dz],c',č[tʃ],ǰ[dʒ],č῾
  • s,z,š[ʃ],ž[ʒ],
  • m,n,l,ł(古音ではそり舌のlで[ɭ],現代音では[ɣ]),r,ṙ(rより振動が強い)
  • h,x[x],vおよびw[v],y[j](現代音では語頭で[h])
  • wとvは同音異綴である。
    • 二重母音の要素で用いられるときはw
    • 語頭でv
    • [ov]と発音する綴りでv(owとすると[u]を表す)
    • 上以外ではw

ə

  • 語頭以外はəは表記されない。
  • 子音が二つ隣接する場合、その子音の間にəを入れて発音する。

アクセント

強弱アクセントでəを除いて語末に強勢がある。

母音の交替

アクセントのあるi,u,ē,oy,eaは格語尾などによってアクセントのない位置に来ると以下の音に変わる。

  • i → əあるいは脱落(ただし語頭で後ろに単子音を伴う場合、単音節語で母音に隣接する場合、nまたはł+子音の前にある場合は起きない)
  • u → əあるいは脱落(ただし語頭で後ろに単子音を伴う場合、単音節語で母音に隣接する場合、nあるいはł+子音の前にある場合は起きない)
  • ē → i (ただし母音に隣接するときはおきない)
  • oy → u
  • ea(eay,iay) → e

名詞

  • 文法性:なし
  • 数:単数、複数
  • 格:主格、属・与格、対格、所格、奪格、具格
  • 活用の種類:母音語幹(a-語幹、o-語幹、i-語幹、u-語幹)、子音語幹(n-語幹、r-語幹、l-語幹)、不規則名詞

a-語幹

o-語幹

  • 名詞によっては所格に-iも取るものがある。

i-語幹

u-語幹

  • 単数具格は-uw>-uとなったものである。
  • 単数奪格は-uē型をとるものもある。

r-語幹

r-語幹の名詞は単数主格形が子音+rで終わっているものに多い。単数主格、対格が他の形と語幹が異なる。

l-語幹

n-語幹1

n-語幹2


動詞

  • 態:能動態、中・受動態
  • 法:直説法、接続法、命令法
  • 時制:現在、過去(アオリストに由来)
  • 不定詞:一つ
  • 分詞:一つ

関連項目

  • アルメニア語
  • アルメニア祖語
  • アルメニア文字
  • 典礼言語
  • アルメニア語訳聖書

アルメニア語の語彙本3000語 T&P Books Publishing

古典アルメニア語辞典 千種 真一(著) 大学書林 版元ドットコム

アルメニア語文法 佐藤信夫 古本よみた屋 おじいさんの本、買います。

アルメニア語を学ぶ Pinhok Languages

世界の文字